契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
 でも今目の前にいる人は正反対、俺様とまではいかないけれど芯が強く自信に満ち溢れている、強いて言うなら野性的な男性だ。

 どうしてそんなことをしているのかわからないけれど、不可解な言動に疑念が膨らむ。でも彼は、参ったというようにこめかみの辺りを掻き苦笑いした。

「天海八重……か。俺のことをよく見てるじゃないか。うん、いい傾向だ」
 
 ニヤリと意地の悪い笑みを見せた社長は、いきなり私の顎を掬う。

「あの日、自分のことを僕と言ったのは印象をよくするため……とでも言っておくか。特に理由はない、そういう気分だっただけだ」
 
 歯切れのよくない返事をした社長はそう言って、今日初めて目を逸らす。納得できる答えではないけれど、これ以上聞くのもどうかと聞き返すことはやめた。でも代わりに、眉を顰めて見せる。

「でもこれだけはハッキリ言っておく。最初から抱こうと思って、八重に声をかけたわけじゃない。なんて言われても今更だし嘘くさいな。信用するかしないかは、八重の勝手だ」


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