契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
 同時に私の中にあった迷いのようなものも吹っ切れて、心がスッと軽くなる。大吾さんとの新しい生活が始まったのだから、こうなったら運を天に任せるしかないと。

「八重」

 窓のそばに立ち眼下に見える街並みを眺めていた私を、大吾さんが呼び振り返る。するとキッチンに立つ大吾さんの姿が目に映り、「コーヒー飲むか?」と聞かれ慌ててキッチンへ向かう。

「そんなこと私がやります。大吾さんは座っててください」
 
 男子厨房に入るべからず──なんて今の時代は古いのかもしれないけれど、やっぱり男性はドカッと座って待っていてほしいと思うわけで。

 でもキッチンに立つ大吾さんの姿は自分が思っていた男性像よりもうんと素敵で、思わず見惚れてしまう。

「コーヒーを淹れるだけだ。それに俺はひとり暮らしが長いからな、たいていのことはできる」
「でも」
「でも、は禁止だ。八重ひとりに家事を任せようとは思ってない。ふたりで暮らすんだ、やれるときにやれるほうがやればいい」



< 62 / 172 >

この作品をシェア

pagetop