契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
「止められなかった、悪い」
「さっき、今日はここまでって言ったじゃないですか。悪いと思うのなら、最初からしないでください。話の続き、できなくなったじゃないですか……」
 
 ため息をつき唇を尖らせる私に、大吾さんがニヤリといたずらっぽい笑みを見せる。

「悪かった。冷蔵庫に雨夜の月を冷やしてある。軽くつまみを作るから、飲みながら話を聞かせてくれないか?」
「えぇ、雨夜の月!? それを早く……あぁ、えっと、その。ど、どうしましょうか」
 
 思わず雨夜の月の言葉に飛びついてしまい、恥ずかしさからなんとも曖昧な返事をしてしまった。どうしましょうかだなんて、どうもこうもないのに……。
 
 熱くなった頬を隠すように、目線を逸らし俯く。
 
 現金な女だと思われただろうか。

 お酒は何でも好きだが日本酒は別格。月菱酒造から合格通知が来た夜も、ひとりで祝杯を挙げたほどだ。

 さすがに毎晩晩酌というわけにはいかないけれど、記念日や大切な日に飲む日本酒を楽しみにしているなんて言ったら、女のくせにと引かれてしまうに違いない。


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