カレシとお付き合い① 辻本君と紬
♢ 私、彼氏がいる




 試合の帰り。

 今日は学校から1時間ぐらい離れた高校で試合があった。
 駅から、大きな川の広い土手を通り、その川を渡ったりして、結構のどかな場所だった。

 サッカーをしている辻本君は、誰よりもカッコいい。
 背が高いし大柄なので目立つ、と私は思う。マネージャーの仕事をしながら、目は辻元くんを追う。

 大きな声で指示を飛ばす、満面の笑みで喜ぶ、腕で汗を拭う、目が彼だけを追ってしまう。

 女子マネはみな、自分のカレシが好プレーをすると、「よしっ」とか、口の中で言ったり、ガッツポーズを一人でしたり、ちゃんとお仕事の手を休めず、目の端で、それぞれずっと見ている。

 終わった後、相手チームに書類を渡すように私は頼まれて、それに行っている間にみんなが帰っていて、辻本君だけが待っていてくれた。

 携帯にまいちゃんから、

[お先〜、辻本と帰っておいで〜]

と連絡がきていた。
 2人で帰るんだ⋯⋯ 。

 いつも教室で話したりしているのに、本当に2人きりだとソワソワして、自分を戒める。

 今日の試合についてポツポツ話した。
口数は少ない。

 夕方の郊外からの電車は空いていた。
初めて男の子と2人きりで電車に乗って、隣の席。
 1日がおわって、満たされて、急いでなくて、赤い夕日が照らす。
 試合帰りの少し興奮した熱い体に、まだ冷めない熱が心地よく体にまわり、余計に満たされていて、その逆にもどかしくもっと大きな熱量でなんか欲しくなる。
横に座る、辻本君に、余計気持ちがたかぶる。
あったかい気持ちが全身にまわる。

 でも、そこに暗くかげる私の後悔。
大きな影が冷たくおおいかぶさる。
 こんな事したらダメだ。

 辻本君が何か言いたそうに黙った。
何となく、思い違いでないなら、たぶん⋯⋯ 。

ギュッと目を閉じた。

同時に心もギュッとしぼるように、かたく閉じるように封をして、唐突に、


「私、彼氏いる、」


と早口で言った。

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