カレシとお付き合い① 辻本君と紬


 試した⋯⋯ ? 


「こんなやり方、らしくないな、自分でも。馬鹿なことした⋯⋯ 」


と辻本君は眉間に後悔をにじませた。


「待つって言ったのにな。紬の気持ちを見たくなった。オレが告られても平気なのかって⋯⋯ 」


私の気持ちが 見たい⋯⋯ 。


「俺は紬のどんな気持ちも大事にしたい。紬の思うこと、考えてること含めて、丸ごと全部を好きになりたいんだ」


彼の言葉が流れ込んでくる


「紬の心を知りたいからってわざと試すなんて、違う。しかも、他の人を2人の間に入れるようなやり方。紬を傷付けるなんて違う。本当に悪かった」


 辻本君は、頭を下げてきた。
 私の肩に彼の髪の毛がさわった。
 彼のおでこがコツンと私の右肩に押し当たる。
 少しだけ私が顔をかたむけたら、彼の髪が私の頬をかすめる。
 やっぱり石けんと彼の熱の匂い。
 おでこからも、大きな手からも、彼の体温が優しく私にしみこむ。

 彼があやまった。
でも、もっと強い気持ちと自信を感じる声で、


「甘やかせてやる。丸ごと全部受け止めてやるから」


と私の肩に髪をつけたまま、強い眼差しで、下から私をまっすぐ見た

 彼の心が流れてきて、私の気持ちを強く押してくれる。

 間違ったまま、逃げてる自分に。
 今、私はちゃんとしないといけない。


「何が紬の心を止めてる? 」
「私⋯⋯ 」
「ずっと見てたから分かる。紬はここにいる。紬の気持ちもここにあるだろ? お前の気持ちの中に『そいつ』はいないし、実際連絡すら取った事ないんじゃないか? 」
「⋯⋯」
「話して欲しい」

< 21 / 36 >

この作品をシェア

pagetop