センチメンタルナイト【完】
据え膳食わぬ男の恥というが、寝込みを襲うなんてそんな下衆な行為、夕紀の傷をえぐることになりかねない。
そもそも向こうにその気はないのだから、この諺は適用されない状況だ。

俺は邪念を振り払い短くなってきた煙草を灰皿に押し付け、ひとまず風呂に入ろうと立ち上がった。
その時だ、か細い声が耳に届いたのは。


「……火野、結婚しちゃうね…」
「……、起きてたのか」
「ごめん。実は仁の家についた辺りから、結構意識もしっかりしてた」
「あれだけ飲んでたのに回復早いな」
「…………」
「……夕紀?」
「……うん、ごめん」
「なんで謝るんだ」
「あはは、こんなの私らしくないよね、ウザいよね……。でもさ初恋で高校生の時からずっと想い続けてたからちょっとショック大きすぎてさ、……なんかもう駄目だね。どうせ私みたいなやつ、一生彼氏なんてできないんだ……」
「…………」
「……ねえ、今から馬鹿なこと言うね」
「……なんだ?」
< 20 / 31 >

この作品をシェア

pagetop