余命38日、きみに明日をあげる。

「そんな薄着で寒くないの?」

琉生がいぶかし気に私を見る。

「中にセーター着てるから大丈夫だよ」

「見た目が寒そうなんだよ。ほっそいし。そんなんじゃ、熱たくわえらんないだろ」

そう言う琉生の方が寒そうだけどな。
 
琉生はおもむろに自分のマフラーを外すと、私の首にくるっと巻いた。

「えっ、琉生が寒くなっちゃうよ!」

「いーの」
 
外そうとすると、優しく静止された。

「……ありがと。今日は早く帰れるから、そんなに防寒してこなくてもいいかなって」
 
本当はすごくうれしい。首を下げて口元にマフラーを当てた。あったかい。琉生のにおいがする。

「帰りより朝の方が寒かったりするんだよ。油断するなって」

「はあい」

やっぱり琉生は過保護だ。
 
──チリリリン。

後ろから自転車のベルが鳴って、私はあわてて横にずれた。

その左側、私のぎりぎり横を猛スピードで通過する自転車。
< 122 / 288 >

この作品をシェア

pagetop