余命38日、きみに明日をあげる。

フォークに取ったケーキ掲げてみせるけど。

「……いらない」
 
プイッと横を向いてしまう。
 
いつもそう。おじさんの作ったケーキをかたくなに拒否する。

医者を目指していることを認めてくれないからって、おじさんのケーキに罪はないのに。

「これね、クリスマスケーキの試作品なんだって。今年もまたクリスマスには行列ができちゃうね。私もまた手伝いたいなあ…………え?」

話している途中、琉生の顔がわずかにゆがんだ気がして、私は語尾がしりすぼみになった。

だって、それはまるで反対ですと言っているようで。

「どうしたの? 私がお店のお手伝いしたらまずい?」

最近では一切bonheurに寄り付かない琉生は、それすら気に入らないのだろうか。
 
私は昔から、高校生になったらアルバイトをしてみたいと思っていた。

働いてお金を稼ぐという経験をしてみたかったのだ。
 
でも体が心配だからと、お母さんからは禁止令が出てしまった。
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