愛は知っていた【完】
……ああ、こうやって頭を撫でられていると昔のことを思い出す。

みんなで公園でおにごっこをしている時、真っ先にお兄ちゃんを追いかけることに夢中だった私が転んで、そしたらお兄ちゃんが痛いの痛いのとんでいけーって、泣きじゃくる私の頭を撫でてくれた。
おんぶをして家まで運んでくれて、お母さんがいない時はお兄ちゃんが不器用なりに手当てしてくれた。
私が中学生になりマネージャーを始めてからは、怪我をしたお兄ちゃんを私がテーピングしてあげたりして、昔とは逆だねなんて笑い合ったりして。
その時も「ありがとな」ってお兄ちゃんは私の頭を撫でてくれた。

お兄ちゃんに頭を撫でられるとすっごく心が落ち着くし、それからどうしようもない幸福を覚えるの。
温かくて優しくて、私の全てを包み込むような幸せ。
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