君のブレスが切れるまで
「何か考えてる?」


 首を傾げ、伺うように雨は私の顔を覗いてくる。赤い眼はいつものように綺麗で、こんなことを言っているけど、本当は私の考えを見抜いているのかもしれない。
 雨には感謝の言葉しか浮かんでこないはず。けれど、ここまでしてくれる彼女に不信感を覚えてしまう私は性格が悪い。極力考えを悟られないように、プイと顔を逸らす。


「なんでもない、それより学校行こうよ」
「ええ、そうね。遅刻してしまうわ」


 雨はスマホで時計を確認すると、私と一緒に人の多い街路樹の通りを駅の方向へと歩き始める。
 彼女と一緒に暮らし始めて、大きめの部屋を一つ提供してもらった。前のアパートに比べたら、贅沢と言ってもいいくらいの広さ。


 私の新しい部屋にはベッド以外の家具はないけど、『必要なものがあるなら、すぐに揃えるから』と彼女は言ってくれていた。だけど、遠慮してしまうのは人の性かな。住まわせてもらっている分際で、これ以上を望むことなんてできない。
 それに……雨との関係もまだまだ仲良くなったという感じじゃないから。


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