溺愛予告~御曹司の告白躱します~

水瀬が企画課に異動して半年たった今も、以前と変わらずに飲み仲間のままだ。
送別会の時に感じて蓋をした感情は、行き場を失って今も胸に燻ったまま。

同期会でも、二人で飲みに行った時でも、主に話す内容は仕事のことが多い私たちは、ある程度互いがどんな仕事をしていてどのくらい忙しいのかを把握している。

正直私は企画の仕事はさっぱりだけど、半年前まで営業にいた水瀬は私が学生寮の案件を受け持っていることを知っていた。

爽くんの言葉を受けつつ、返事を投げかけたのは私に向かってだったのに驚きつつも口を開く。

「うん。女をなめてる頭の固いおじさん連中をメロメロに口説き落としてくるよ」
「…言い方」

ガッツポーズをする私を真っ直ぐに見つめる水瀬が眉を顰めたのに気付かないフリをした。

女であることがこの建築営業の業界で不利に働くこともあるのを水瀬も知っているからこそ心配させたくなかった。

「『オラがおじさんたちに寮の建て替えを勧めてくるぞーぉ』なんつって」
「おお!すげぇ!」
「ふふふ、似てた?レパートリーお披露目第一弾」
「めっちゃ似てます!」
「…何してんだお前ら」

呆れて苦笑した顔を見てほっとする。

いつからだろう。
水瀬が真剣な顔つきで私を見ると落ち着かない気分になるようになったのは。

同期として気取らない付き合いの出来る唯一の男友達。
バカみたいな会話をして笑って、仕事では助け合って、気が向けば一緒に飲みに行って。

そんな居心地のいい関係がずっと続くと思っていた。

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