溺愛予告~御曹司の告白躱します~

するとそこに見覚えのある背中を見つけてギクリと身体に力が入ってしまった。
昨夜やり取りしたくだらないメッセージと来週の約束が頭をよぎる。

周りに誰もいなくてもピシッと伸びた背筋。均整の取れた身体にぴったりと合うスーツはきっとオーダーメイド。
真っ黒で艶のある黒髪は短めに整えられている。

「蓮兄」

そう呼ばれて振り返った水瀬は、声の主の隣に私がいたことに少し驚いた顔をしながらもすぐにポーカーフェイスに戻る。

「おお。外回りか」
「うん、これから大学行ってくる」

水瀬帝国の王子が揃い踏みだ。
社の女の子たちに見つかればさぞキャーキャー喜ぶんだろうななんて完全に他人事でふたりを見る。

アイドルのような甘い顔立ちの爽くんに比べ、水瀬はキリッとした切れ長の目が印象的な端正な顔立ち。
俳優として映画のポスターに載っていても何の違和感も抱かないほど整っている。

身長はふたりとも同じくらいなので水瀬家の遺伝の為せる技なのだろう。

百五十五センチという平均を下回る身長の私からすればとんでもなく羨ましい遺伝子だ。

従兄弟同士とはいえ似ていないふたりだけど、すこぶる容姿がいいのには違いない。

その人達から受け継いだであろう我が社の社長と副社長の顔を思い出そうと頑張ってみたものの、ぼんやりとしか出てこず薄情な社員で申し訳なくなった。

「あぁ、学生寮?」

あとで就活の時ぶりに会社のホームページを見てみようと思っていたら、水瀬の視線がこちらを向いていた。

< 11 / 178 >

この作品をシェア

pagetop