溺愛予告~御曹司の告白躱します~

初めて会った日から、あいつは特別だった。

物心ついたときには周りから『水瀬の御曹司』と言われ、ふたつ年下の従弟、爽と共に水瀬ハウス工業を担っていくよう教育されてきた。

中学に入る前にはもう女から告白されることは日常茶飯事で、初めて彼女が出来たのも中学一年の頃だった。

中学の頃は、そんな風に女にモテることが少なからず嬉しかった。友達からも美人な先輩を彼女として連れていると羨ましがられた。

でもそれも束の間の話。
中学を卒業する頃には、俺に好意を寄せる女の本音に気が付いた。

彼女たちが魅力を感じているのは俺自身ではない。
俺の母親譲りの整った顔立ちと、水瀬の御曹司という肩書き。

そのことを肌で感じた俺は、高校入学時も大学入学時もなるべく家のことを話さず、会社経営の一族だということが周りに知られないようにしていた。

高校卒業前に告白され付き合っていた彼女にも、家族の仕事のことは一切話さなかった。
それでも大学三年の頃、どこからか俺の父親のことが耳に入ったらしい。

なぜ話してくれなかったのか。それなら就活なんてしなくていいし楽になる。

そんな本音が透けて見える態度にうんざりして、徐々に距離を置くようになった。

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