溺愛予告~御曹司の告白躱します~
そして、社会人としてはじめの一歩を踏み出す入社式。
隣に座っていた女性に声を掛けられ、俺は警戒しつつも名前を告げた。
『あー!噂の水瀬帝国の王子!蓮って“一蓮托生”の蓮の字?私の座右の銘なんだ。同期だし正にだね。よろしく!』
式典が終わり、同期がそわそわしながら俺を見ていた中、彼女だけがあっけらかんとした態度で俺に接してくれた。
俺を王子と呼びながら、大きな会社の御曹司と特別視する事をしない。
思わず目の前の彼女をじっと見つめた。
それでも色目を使ってくることも、媚を売ることもしない。
『…座右の銘が“一蓮托生”って微妙じゃね?』と初対面なのについ素で突っ込んでしまうと、『運命共同体になってみんなで頑張ろうっていう良い言葉じゃん?』と無邪気な笑顔で返された。
……運命共同体。
いつも水瀬の御曹司として担ぎ上げられる事が多かった。
いずれ自分がこの会社を引っ張っていくんだという自負もあった。
その無意識に感じていた気負いやプレッシャーを、一瞬にしてはね飛ばしてくれたのが彼女だった。
『変な女』
たったそれだけのやり取りで、俺は莉子に惹かれてしまった。