溺愛予告~御曹司の告白躱します~

ちなみに爽くんの父親である水瀬仁志社長の写真も拝見した。どこにでもいそうなおじさんで、特に高身長でもなく失礼ながらイケメンの名残り的なものは見当たらなかった。

副社長に至っては顔写真も載っていなかった。
王子達は母親に似ているのだろうか。

最上階の二十一階が社員食堂になっていて、ワンコインでレストランばりに美味しい食事が楽しめる。

お弁当を持参する時間も気力も女子力もない私は、会社にいる日はほぼ毎日ここでお昼ごはんを食べていた。


JRが四線、地下鉄が二線乗り入れる大きな駅の近くにあるビルの最上階からの眺望は、眼下はほぼ線路。少し奥には東京タワーが見える。
都心を一望でき、夜景も綺麗に違いない。…見る機会はないけど。

今日もワンコインのAランチを選び大根おろしたっぷりのポークソテーを頬張っていると、スパイシーなカレーのにおいをぷんぷんさせながら向かいの席に誰かが座った。


ドキンと心臓が嫌な音を立てて弾む。
顔を見なくても足音でわかってしまうなんて、私も相当重症だ。

「お疲れ。珍しく遅いな」

時刻は午後二時になろうとしている。

昨日から爽くんが風邪で休んでおり、任せていた資料を自分で作っていたらお昼をとっくに過ぎてこの時間になってしまった。

それでも奇跡的にAランチが残っていて、るんるんで箸を進めていたというのに…。

「…お疲れ様。水瀬も今お昼?」
「誰かさんが朝からくだらねぇメッセージ送ってくるから調子出なくてこんな時間」

ご飯とルーを全部混ぜながらカレーを口に運び、ちらりとこちらを睨んでくる。

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