溺愛予告~御曹司の告白躱します~

それからだ。
水瀬がどこか変わったように感じることが多くなったのは。

少し前髪を切ればそれに気付き、季節でメイクを変えればコメントをくれる。
『タモさんか!』とつっこみたくなるのにそれが出来ないのは、からかったり気まぐれなんかじゃない、甘く絡め取るような視線が私を惑わそうとするから。

いきなり同期の距離感が崩れたわけじゃない。
今まで通りバカバカしいノリの会話にも付き合ってくれる。

でもそれだけじゃない、私を女性扱いしていると私に気付かせようとしている意図を所々に感じてしまう。

それが私の自惚れだったらいいと、この一年半ずっと思っていた。

私がただの自意識過剰なだけで、水瀬は王子の名に相応しくただ紳士的なだけ。
私だけじゃなく、他の女の子にもきっと同じようにしているに違いない。

そう思い込もうとすると、喉の奥がぎゅうっと痛むような気がするけどそれも気の所為にして。

私は彼の特別なんかじゃない。
ただ他よりも少し距離の近い仲の良い同期。

それが一番平和。

そう思いながらも、もし違ったらという小さな疑問が私の心から消えなくて。

もしも私が思っている通りだとしたら。
心の中でさえ直接的に言葉に出来ない思いを彼が私に抱いているとしたら。

それを私に伝えようとしているのだとしたら。

そんな疑念が胸を締めている状態で毎週のように水瀬と飲みに行くのが難しくなってきたこの半年ほど。

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