溺愛予告~御曹司の告白躱します~

学生寮の建て替えやリノベーションの営業と同時進行で、デベロッパー的仕事も請け負っている。
会社保有の事業用地で建築建設の意向のあるお客さんを探していた。

そこで半年ほど前から目を付け営業をかけていたのが、遊園地のジェットコースターやゲームセンターのアーケードゲームなどの部品を扱っている生田化成工業という会社の工場の移転。

最初から移転の話を持ち掛けるわけではなく、まずはその会社の信頼を得るために、何か困っていることはないかと手助けに回った。

他部署にも力を借り、社員のご自宅の提案や社員用の借り上げ住宅を斡旋したりと良好な関係性を半年かけて築いてきた。

そこでいざ工場の移転を提案しようとした矢先、急に相手先の担当者が突然の退職により変わってしまった。



「若い姉ちゃん相手じゃ話になんないよ。うちを下に見てんの?」

前担当さんから謝罪の電話をもらい、すぐに新しい担当さんへご挨拶に出向いたが、私に向けられたのはそんな言葉だった。

名刺を出したものの受け取ってもらえず、表情が固まる。

落ち着かなきゃ。
こんなことは初めてじゃない。

それなのに、この半年の頑張りが相手の担当が変更になっただけで脆くも水の泡になろうとしているのを悟り、頭が真っ白になった。

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