溺愛予告~御曹司の告白躱します~

私も遠慮なくお酒を飲んで「女なめんなー」って管巻きながら愚痴って、最終的には「男みんなハゲろ」ってバカみたいに八つ当たりして。

そんな私と、水瀬は「俺は除外してくれ」って呆れた顔をしながらもずっと一緒にいてくれて…。

今日だって、いつもだったらさっきの担当者に言われたことを愚痴って。

「御曹司って聞いた途端手の平返しやがってー!メタボになってしまえ!」って呪いながら笑って一緒に飲めるはずだったのに。

それなのに。
水瀬があんなこと言うから…。


「先輩、もう定時になりますけど。このまま帰ります?」
「ううん。帰ってもう少し仕事する。今日のうちに報告もしたいし」
「…無理してません?」

無理してでも今は仕事をしていなければ。
今帰った所で嫌な考えに押しつぶされてしまうことは火を見るより明らかだった。

泣かない。
こんなことで泣いてはいけない。

営業車を置いてくると言ってくれたので、遠慮なく一人正面で降りてエントランスをくぐる。

本来社員用出入り口があるのだけど、十七時半を少し過ぎたばかりの今はきっと定時上がりの社員などで往来が多い。
こんな涙腺が緩んでいる状態でそこを通れる自信はない。

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