純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
「っ……ねえ、さ……姉さん……っ!」
一度堰を切った涙は、決壊した川のように止まることを知らない。何度も名前を呼び、砂利の上で手を握りしめ、いくつもの雫で地面を濡らした。
一瞬だけ見た彼女の白い姿は、死に装束というより白無垢のようだった。死後あまり時間が経っておらず、亡骸となってもなお美しいとは、まったく玉響らしい。
十歳になる前から遊郭に入った睡蓮にとって、ずっと面倒をみてくれていた玉響は無条件で信頼できる人であり、憧れであり、本物の姉同然だった。本物の家族よりも、大好きだった。
神無月の肌寒い朝の空気を、悲しみに満ちた叫びが震わせる。
──ここは吉原遊郭。恋愛に一番遠い、虚しさと絶望が渦巻く場所。