純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
玉響の死からひと月が経った、霜月の中頃。ちらほら木々の葉が色づき始めた今日、睡蓮は初見世を迎えた。
これまで振袖新造という立場だった彼女は、客は取らずに姉女郎の世話をしていたが、十八歳になると一人前の花魁として営業を始めるのだ。江戸時代では、初見世を迎えた遊女は派手に花魁道中を行っていたものである。
そして、ここ藤浪楼には、花魁と客との間に古くからのしきたりが残っている。
一回目の〝初会〟で花魁は初めて客と対面するが、話もせず顔を合わせるだけ。二回目の〝裏返し〟で少し距離を縮め、三回目で〝馴染み〟となりようやく部屋へ招かれる。つまり、簡単には花魁と一夜を共にすることはできないのだ。
すでにこの制度をやめている見世が多いが、藤浪楼ではそれを残しているが故に価値が高く、興味を持った客がひっきりなしに訪れる。
花魁という最高位になった睡蓮も、今日の初会では客と口も利かず、飲食もせず、ただただやってきた男を眺めていただけ。初見世と同時に夜の相手をする他の見世とは違い、処女を失うまでに二度の猶予があるということだ。