純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
このサンドウィッチという食べ物はここへ来て初めて見た。上流階級の者しか手が出せないものであったが、最近になって庶民の間でも食べられるようになってきたらしい。
新聞を読んでいる中年男性のもとへ歩み寄り、睡もすっかりお気に入りとなったそれを差し出す。
「お待たせいたしました。サンドウィッチです」
「ああ、ありがとうね」
礼を言いながら顔を上げた男性客は、睡を見上げて一瞬ぽかんとしたあと、バサッと新聞を閉じて有美のほうに声を投げかける。
「ちょっと江森さん、いつの間にこんなべっぴんさんを置くようになったんだい? これじゃカフェーと間違えちまうよ」
笑って茶化す彼に、睡は無邪気に笑い返した。
近年、客の話し相手になる女給のサービスやアルコールを提供する、カフェーと呼ばれる店が急増している。喫茶店とはまた違った形態で、女性を目当てに訪れる者も多い。
他の客へのコーヒーを手に奥から出てきた有美は、眉間にしわを寄せてあからさまに不機嫌さを露わにしている。
「カフェーだぁ? やらしい目で見るんじゃないよ! うちはちゃんとコーヒーと飯で勝負してんだ、この節操なしが」
「そこまで言わなくても!」