純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
心緒繚乱

 年末はあっという間に過ぎ、新しい年を迎えた。

 鉄道が普及してきた頃から、正月に神社や寺に参拝する人がとても増えた。これを初詣と呼ぶようになったのは比較的最近で、全国のあちこちで盛んに行われている。

 睡も時雨と初めて明治神宮にやって来た。玉砂利を踏みしめて参道を進み、驚くほど大きな鳥居をくぐると本殿がお目見えする。

 しかし、小柄な睡の目に映るのはごった返す人の頭ばかりで、なかなかしっかりと本殿を見ることができない。


「すごい人ですね。時雨さんがいなかったら揉みくちゃにされています」
「そうだな、君が迷子になるのは目に見えている」


 しっかりと手を繋ぐ旦那様にあっけらかんと言われ、睡はむすっとして目を据わらせた。時雨はいたずらっぽく口角を上げる。


「そういう君も可愛いという意味だ」
「慰めになっていません……」


 可愛いの意味合いが求めているものとは違う気がして、睡は内心さめざめと泣いた。

 ちょっとしたことで喜んだり驚いたりする単純さだとか、ケーキを落として泣いたりだとか、子供っぽい部分が多いと自覚している。

 でもやはり、好きな人にはあまり子供扱いはしてもらいたくない。その相手が大人な男性ならなおさら。
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