この恋が手遅れになる前に
あなたが再び奪われる前に
◇◇◇◇◇



「各道路の角に置くフラワータワーは、定期メンテ先から下がってきた生花を切って使おうと思っています。終了後に状態の良い花はまた使う予定です」

「その設置の人員は足りているのか?」

「緑化では足りないので営業部からも手伝って頂けたら助かります」

イベントの工程を説明する涼平くんはバイト時代を含めて5回目なので説明も慣れたものだ。

社長と役員と各部署の代表が集まった会議室は窮屈に感じる。ホワイトボードの前で堂々と発言する涼平くんに対してサブリーダーの加藤さんは不安そうな顔をしている。

もう新人とは言えなくなった涼平くんにサブで加藤さんをつけるのは逆に足手まといなのではと一部の社員が意見をしてきた。けれどいつまでも新人気分では加藤さんにとっても良くないと、政樹は敢えて重要なポジションに加藤さんを据えた。それが失敗なのではと私まで不安になる。

「当日は僕と次長が全体の監督なので、フラワーカーペットの指揮は古川さんと加藤さんにお願いします」

涼平くんの言葉に頷いた。自分が新人のころを思い出す。当時は政樹がリーダーで私がサブだった。そうしてフラワーカーペットで子供たちと遊んでしまって涼平くんの目に留まったのだ。

当日の流れの話が終わったところで会議が終了した。
他の社員同様に書類と手帳、ペンをまとめていると社長が不意に「営業部長はもう式の予定を社員に報告したのか?」と口にした。社長の横に座った章吾さんが「まだです」と返事をする。

章吾さんの結婚式に社員を招待することは前から知らされていた。同じ営業部の私も招待されることは当然のことだ。残酷だけれど私は元カレの結婚式に出席しなければいけない。

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