呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?


「先程わたくしの部屋に運ばれた花にこの子たちがついていたんですけれど、屋敷から連れてきた侍女のボニーがひどく取り乱して大変でしたの。カップは投げるわ、皿は割るわ……。この子たちに罪はないからわたくしが責任を持ってここまで連れてきましたのよ」

 話を聞いたシンシアは眉を上げた。
 廊下で耳にしたあの悲鳴はフレイアではなく侍女のボニーだった。ということは、冷静に話しかけていた声がフレイアということになる。

(あの悲鳴はフレイア様じゃなかったんだ。声しか聞いていない女官や侍女からすると勘違いしてしまうわね)

 フレイアを見ていると、生き物が好きという点でロッテを彷彿とさせる。
 シンシアは隣に立つと一緒に芋虫を眺めてから目を細めた。

「事情は分かりました。それでその芋虫たちはどうするんですか?」
「低木がある場所ってご存じですか? この子たちを自然に帰してあげたいのだけど適した環境が見つからなくて困っています」

 それなら、とシンシアは低木の植わっている場所へ案内する。
 庭師に駆除されるかもしれないのでできるだけ目立たないところへ連れて行き、フレイアは芋虫たちを葉っぱが生い茂る枝の上に載せた。

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