呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?


「ルーカス。ヨハル様はあなたを見放したわけではありません。確かにここ数年多忙で公の場以外で接する機会が減ったかもしれませんが……。ヨハル様はあなたのことを息子のように大切に思っています」

 リアンは肩に提げていた鞄から丸められた羊皮紙を取り出した。紐を解いて広げると、そこに書かれているのは嘆願書で、ヨハルの署名が入っている。
 さらに内容はルーカスを予言者に格上げできないかというものだった。

「これを見てもまだヨハル様から愛情を注がれていないとでも?」


 ルーカスは嘆願書を凝視する。それから信じられないといった様子で首を小さく横に振った。

「あなたは解呪の精霊魔法しか使えない詩人。でもこれまで多くの危険から人々を守ってきました。その功績を称えて予言者に昇格できないか、ヨハル様が他の大神官たちに申し入れをしたのです」

 大神官の樫賢者はヨハル以外にもあと二人、アルボス帝国内の教会に務めている。ルーカスを予言者にするためには彼らに承認を得る必要があった。
 事実を知ったルーカスは俯くと消え入りそうな声で呟いた。

「俺、何やってんだよ……馬鹿だなあ」

 シンシアはルーカスの手に触れると治癒の魔法で怪我を治した。
 温かな光に包まれた手の甲の傷は癒え、傷口は跡形もなく消えていく。

「俺、ほんと……馬鹿だよなあ」
 今度のルーカスは憑きものが落ちた表情で、声を潤ませて呟いたのだった。

< 192 / 219 >

この作品をシェア

pagetop