呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?


「……ユフェ様のお世話ができて私はとても光栄です。ご期待に応えられるよう誠心誠意尽くさせていただきます」
 ロッテは無理矢理笑顔を作る一方で、手に持っているブラシをきつく握り締める。
 その様子を見ていたシンシアはなんだかちぐはぐな態度に首を捻った。


「それでは陛下、行ってらっしゃいませ」

 ロッテは一度席を立ってイザークの見送りをした。廊下へ出てイザークの姿が見えなくなるまで深々と礼をした後、上体を起こしてこちらに戻ってくる。


 シンシアは引き続き毛並みを整えてもらえると思って待ち構えていた。ついでに浮かない顔をしていたことについても訊いてみようと思う。
 不安な点があるならお互い最初に解消しておいた方が良い。

 ところがロッテはソファに置いていたリボンを拾い上げると、手早く木製の小箱に閉まってしまう。

『えっと、ロッテ?』
 シンシアが目を白黒させているとロッテがあざ笑った。

「わざわざ煌びやかな宮殿まで来て動物の世話なんてごめんだわ。意思疎通ができるからって何で私が猫の世話をしないといけないのかしら?」

 ロッテの目に余る豹変ぶりにシンシアはぽかんと口を開けた。ずっと間抜け面をしていたからか、ロッテが苛立たしげに睨めつけてくる。


「皇帝の猫だからって調子に乗らないでくれる? 私は陛下の前では仕事はするけど、二人きりの時はあなたの世話なんてしないから!」

 ロッテはフンっと鼻を鳴らすと小箱を持って足早に部屋から出て行ってしまった。
 何が何だか分からず取り残されてしまったシンシアは暫くの間呆然と佇んでいた。

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