呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
(ロッテが魔法が使えなくなったのはあの薬のせい? もしそうならあれは毒薬よ)
ロッテはよろめきながら立ち上がると机へと向かう。苦痛の表情を浮かべ、楽になりたいと手を伸ばす様子を見てシンシアは焦った。
『それを飲んじゃ駄目!』
しかしロッテにはシンシアの言葉が届いていないようで薬瓶の蓋を開ける。手のひらにコロンと出てきた丸薬からは先ほどよりも一層瘴気が強くなった。
(多分ここからじゃ浄化の魔法は届きそうにないわ)
瘴気を浄化するにはシンシアが対象物に接近するか触れる必要がある。この距離では浄化できるかどうか怪しかった。
『せめて、せめてロッテがもう少しこっちに来てくれたら……そうだ!』
シンシアは顔を小鳥に向けるとロッテの気を引くように頼んだ。小鳥は了解したと短く鳴くとすぐに枝から飛び立って、部屋の中へと入っていく。
小鳥の大きさから瓶を足で掴んで持ってくることは不可能。しかし、手のひらの丸薬を掴んで気を引くことはできる。
「あっ、何するの! それはあなたの食べ物じゃないわ。返しなさい!」
小鳥は器用に飛びながら嘴で丸薬をくわえると窓枠へと降り立つ。
瓶を握りしめたままのロッテは血相を変えて窓辺へ向かってきた。