恋愛境界線
「もしかして、コネ入社とかその辺が気に障ったんですか?」
若宮課長が何となくイラついている原因なんて、私にはそれくらいしか思い当たらない。
「課長のことだから、縁故採用は軽蔑に値するとか思ってたり、します……よね?」
以前買っておいた缶チューハイを冷蔵庫から取り出し、課長の空になっているグラスに注ぎ入れる。
課長は文句も言わずに飲み始めたけれど、その缶チューハイはピーチ味で、若宮課長とピーチ味っていう、似つかわしくない組み合わせに笑ってしまいそうになる。
「……いや。そういったものを、私個人としてはは良しとしないが、けれどキッカケは何であれ、その後の仕事に対する姿勢さえ真剣であれば、軽蔑はしないよ」
「本当ですか?」
「本当だ。その証拠に、私は営業の深山君の仕事ぶりに関して、高く買っている」
部署が違う人を買ってどうするんですか。しかも、それに関しては課長の好意というか私情が、ものすごく入り乱れてません?
──と、言ってやりたいところだけれど、そんなことを口にでもすれば、ゴキブリでも見る様な目で見られそうだ。