恋愛境界線

「だって、女装してたじゃないですか!あれは何ですか?趣味ですか?女装癖があるとか?それとも、隠れおネエ?」


「趣味でもなければ、女装癖がある訳でもない!最後の、おネエ?……に至っては否定するのも、もはや馬鹿らしい」


「ほらほらほらっ!今、ご自分でも認めましたね?」


言質(げんち)を取ったとばかりに、課長に向かって行儀悪くも人差し指を突き出す。


「待ちなさい。今の私のどこに、何を自認する発言が含まれていたと?」


「だって、趣味でなく、女装癖があるわけでも、おネエ系というわけでもないのに女装するなんて、ゲイ以外にどんな理由があるんです!?」


「女装してたからゲイって……()(もっ)て、君のゲイに対する認識からして間違っていると思うんだが。そもそも、ゲイの知識云々(うんぬん)は別として、一体全体、君の頭の中はどうなっているんだ?」


「……どういう意味ですか?」


「君の思考は妙な方向に一直線だけど、もっとフラットに考えられないのか、と言っているんだ」


そう言われても、私としては却って課長が何のことを言っているのか、何を言いたいのか、全然判らない。


若宮課長は、脱力気味にそのままソファに背を預けた。


「全く、どこから話せばいいのやら……」




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