恋愛境界線

横から入られたことに苛立つよりも、若宮課長と一緒にならなくて済んだことにホッとする。


「悪いけど、一つは彼女が座るので、ここは一席しか空いてないんです」


ホッとしてのも束の間、深山さんが二人の女性社員に丁重に断りを入れた。


内心では私に断って欲しいと思っているのがありありと判る視線で、二人がチラリと私の方を窺ってくる。


二人とも見た目は可憐なのに、なぜか無言の圧が強い。


『私はいいので、どうぞ』と席を彼女たちに譲ろうとする前に、今度は課長の声が飛んできた。


「芹沢君、いつまでもそんな所に突っ立っていたら周囲に邪魔だから、早くこちらへ来なさい」


そのセリフに諦めがついたのか、彼女たちは渋々といった感じで別の場所へ移動して行く。


こうなったら、私には課長たちと一緒の席に就くしか選択肢はないわけで。


「……失礼します」


若宮課長の正面の席に静かにトレイを置き、ゆっくりと椅子を引いた。


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