恋愛境界線

渚とは純ちゃんよりも付き合いが長く、それはいわゆる幼なじみと呼べる間柄で、もはや家族みたいな感覚に近く、気を使うこともない。


オカンか!とツッコミたくなるほど口煩く、事実うちの母親より世話焼きだ。


今回だって頼れば、余計なお節介を焼くレベルで私の面倒を見てくれるだろうけど。


だからこそ、私にとっては頼りたくないタイプの人間というか……。決して嫌いなわけじゃないけど、過保護すぎるのが難点だ。


それもあって、駅に到着したこの段階になっても、まだどうしようか迷ってしまう。


そういえば、渚のマンションから若宮課長が住んでいる場所までは、一駅分しか違わなかったはず。


渚にお世話になる件は一旦保留にして、とりあえず若宮課長に服を返しに行こう。


唐突にそう思った。


学生時代、テスト期間中に突然部屋の片づけをしたくなったり、雑誌を読み出したりするのと似た様な心理で。簡単にいえば、現実逃避だ。


そうして向かった若宮課長のマンションは、入り組んでない道のお蔭で、迷うことなく辿り着くことが出来た。


駅から徒歩15分程度。


五階建ての低層マンションは、建てられてからまだそんなに年数が経っていないことが外観からも見て取れるほど綺麗で、洗練されたモダンなデザインだ。


< 48 / 621 >

この作品をシェア

pagetop