恋愛境界線

だから、課長に訊いてみたかった。


「課長は自分が人の上に立つことを、怖く感じたり、不安になったりすることはないんですか?」


大きなプロジェクトはやりがいはあるだろうけれど、私だったらそれ以上にプレッシャーを感じてしまう。


プロジェクトリーダーである課長がプレッシャーを感じないはずがない。


だからといって、それを表に出す人じゃないことも判ってはいるけれど。


だからこそ、最後に課長の内面に触れてみたいと思った。一部下としてでいいから。


正面から若宮課長を見つめると、一度ぶつかった視線が逸らされる。


逸らされて、伏せった視線が、ゆっくりと躊躇いがちに持ち上がった。


「……正直なところ、不安を全く感じないわけじゃない」


それでも、それは心細さは感じさせない、まるで寝る前の子供に絵本を読み聞かせる様な、静かで穏やかな声。


「そもそもブランドを統合する意義は何だと思う?」


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