恋愛境界線

「……えっと、それは遠回しに辞めろということでしょうか?」


仕事もプライベートも、これからは二人で歩んで行けると思っていただけに、突然のこの発言は衝撃的だ。


社内恋愛禁止ではないけれど、周囲に知られれば同じ部署の、しかも直属の部下なだけに、若宮課長的には色々とやりにくくなるのも判るけれど。


それにしたって、ちょっと酷いと思う。


恨みがましく箸を咥えたまま課長を見上げると、若宮課長が唖然とした表情で私を見つめていた。


「辞めろだなんて……なぜ、そういう解釈になるのか理解に苦しむよ」


「だって、いつ辞めるのかってことは、辞めて欲しいと望む気持ちがあるから出てくる言葉じゃないですか」


「初めに辞めると言い出したのは、君だろう?」


「えっ、私が!?」


全然記憶にないんですけど!?


もしかして、酔った時にでも口走ったのだろうか。そんな気持ちは微塵もないのに?


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