恋愛境界線

「あとでデザートに食べましょう!」と言った私に、若宮課長は物珍しそうな表情を浮かべた。


「一ヶ月記念、ね。芹沢君はそういうことには無頓着そうに見えるのに、意外と気にするタイプだったんだね」


そう言われてしまうと、何だか自分ひとりだけが盛り上がってるみたいで恥ずかしくなる。


本当は、一ヶ月記念にかこつけて、単にケーキが食べたかっただけだけれど。


ここで正直に、「ケーキが食べたかっただけです」と言ったところで、もはや言い訳にしか聞こえない。


「若宮課長は一ヶ月記念どころか、クリスマスでさえも『どうしてクリスチャンでもないのに祝わなければならないんだ』とか言いそうですよね!」


「今のそれは、私の真似でもしたつもりか?」


『どうして』の下りを課長の口調を真似て言った私に、冷ややかなツッコミが入る。


「どうせ、へっぽこクオリティですよ。でも、いいんです。一緒に居る時にもっと特徴を掴む努力をしますので!」


「いや、そんな努力はしないで欲しい」


そう断りを入れると、若宮課長は立ち上がって引き出しから何かを取り出した。


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