期間限定恋人ごっこ【完】番外編
「じゃあさっきのは何でだよ」
『だって景色見てたし』
目を合わす合わせないって無意識にやるのにさ、そんなこと言われても私は困るだけなんだって。
『何?』
と冗談交じりで言えば。
「あぁ、俺だけ見てろよ」
と俺様発言が帰ってきて突っ込みたくなった。
ここで私は大いに反発する。
“私は誠人しか見てない”と。
誠人以外見る気もないんだけど。
「ふーん」
『あ、そこのコンビニでいい』
あ、ちゃんとコンビニで降ろしてくれるんだ。
てっきり強制的に正門で堂々と降ろすのかと思ってた。
コンビニの駐車場に車を止めた千也に「ありがとう」と言って降りようとしたとき____
「沙夜」
『うわっ』
「ぜってー振り向かす」
『なっ…アンタッ』
千也は私の腕を引っ張り唇ギリギリ、唇の端っこにキスをした。
してやられた!油断した!
「いってらっしゃい」
千也はニヤリと笑って言うと放心状態になった私を車から出して走っていった。
『嘘…でしょ』
コンビニの駐車場に1人残された私はキスされてしまった現実を受け止めたくなくて呪文のように「あれは夢あれは夢」とブツブツ言っていた。
「さーや」
『うん』
「さ~や!」
『うん』
「んにゃろぉ」
『うん』
「沙夜ッ!」
『ヒィッ!』
誰かさんのおかげですっごい色気のない声が出てしまった。
その誰かさんこと私の親友ユカのお顔がすっごい恐ろしいことになっている。
この子なんでこんなに怒ってんの!?
ユカがなんでどうしてどんな理由で怒ってんのかが分からず、ただただハテナを頭に浮かべるばかり。
『ユ、ユカ?』
恐る恐るユカの名前を口にしてみればユカは机をバンッと強い音をたてて叩き「今日のアンタおかしいッ」と言った。