期間限定恋人ごっこ【完】番外編
『いや、その前に周りの視線が…』
「うるさい!」
う、うるさいと言われましても。
マジで周りの視線がいつも以上に痛いんだって。
そんなユカの腕を引いて教室を出ると保健室へと向かう。
申し訳ないながら2人きりにして欲しいと、先生には一時的に出てもらった。
『で、何を怒ってんの』
「アンタが朝から上の空で魂の抜け殻みたいになってるからイラついてんのよ」
『あ、そうだったんだ…』
気づかなかった。
でも朝あんなことがあったら上の空にもなっちゃうよ。
ユカに怒られちゃったのも千也のせいだ、家に帰ったら文句言いまくってやる。
「で、何かあったんでしょ?」と訊いてくるユカはさすが私の親友だ。
“実は…”と新しい家族の子と、そして問題の兄・福澤千也のことを話した。
あえて今朝の唇の端っこキス事件のことは話さなかった。
放したら絶対この問題に首を突っ込んでくる上に即刻誠人に報告されることだろう。
「本当アンタなんなの…」
『何が?』
「どこまでモテれば気が済むのよ」
『はぁ??』
ちょ、ユカの奴何言っちゃってくれちゃってんの?
私がモテるとか地球が破壊されてもあり得ないことだわ。
今の私は誠人1人に好かれれば十分。
「とまぁアンタに惚れるのは仕方のないこととして、私アンタが心底羨ましいわ」
『なんでよ』
こちとら迷惑なだけなのに。
ユカは本当に羨ましがっていて「千也さんの顔見せなさいよ」なんてプリッと怒りながら言ってきてる。
それを「今度ね」と見せる気などないのにそう言えば「絶対よ。絶対見せなさい」と念を押してきたためこれは本当に見せなくちゃいけなくなった。
もし見せないなんてことがあったらユカはすっごい拗ねるんだろうな。
「で?そのナンパ兄さんのこと北条に話したの?」