期間限定恋人ごっこ【完】番外編
突然のことに男たちは焦りを隠さず、カヨという女も何事よ!と焦っている。
爆音はすぐ近く、というよりアパートを取り囲んでいるようで、男たちとカヨに…もう逃げ場はない。
外を見てくると言った男は中々部屋に戻ってこず、外から聞こえたのは___人を殴る重く、鈍い音と呻き声。
苦しそうな呻き声は外に出た男のものだと分かった。
「オラァ!!」だか「ゴルァ!!」だか知んないけど、そう言っているのはもう耳に染みついてしまった彼の声。
来て…くれたんだ。
「何で来てんのよ。この子を助ける価値なんて微塵もないじゃん!」
カヨは誰かが…彼が助けに来たことがとことん気に食わないらしい。
「北条誠人でしょ?何、本気で付き合ってんの?」
バッカじゃないの?笑っちゃう、そう言ったカヨは馬鹿にした笑い声を出して「はぁー」と吐くと真顔でこちらを見た。
「本当バカね。アンタたちの交際周りが認めると思ってんの?」
カヨの発言に被せるようにドンドン!と玄関のドアが叩かれ、ノブがガチャガチャと音をたてる。
そんなんじゃ開かない、壊してよ…なんて言う気力もない。
「認めないに決まってるでしょ」
カヨはドアが壊されようとしてるのにそんな事気にせずに話を進める。
分かってるよそんなこと。
今だって地味な嫌がらせ受けてるから知ってるよ。
「終わらないわよ」
「沙夜ッ、中にいんだろ!?」
『あっ…まさ、と…』
王子様のお迎えね、と気味の悪い完璧な笑顔で言われ、毛穴と言う毛穴がブワッと開いた。
カヨは言葉を続ける。
「私が消えても北条誠人と付き合ってるのをよく思ってない女が同じことをするわよ」
“同じこと”それは今日起こったこととまさに同じことが…。
考えただけで体が震えだした。
震えと同時にガン!と大きい音をたてて中に入ってきた誠人、それから魑櫻のリンさんとヨウスケさん。
ドアは…見事に破壊されていた。
「沙夜ッ‼」
私の名前を呼んで、欲しかった温もりで私を包んでくれた誠人。
それに安心して気が抜けると我慢していた涙が溢れ出てきた。
ダムは決壊し、とめどなく溢れ、誠人の制服を濡らしていく。
制服は涙でシミを作っていきビチョビチョになっている。
『誠人っ…』
「悪い。悪かった沙夜」
誠人は自分のブレザーを肌蹴た私に掛けてくれてさらに強く抱きしめてくれる。
男たちはボコボコにされ、カヨは押さえつけられていたことに安心した私は意識を手放しかけていた。
手放す寸前、耳に入ってきたのは…
「同じことになりたくないなら…分かってるわよね?」
聞こえたのは、カヨの最後の忠告だった。