廓の華

 彼の瞳に映る私は、小動物のように震えていた。

 私は、なにを。

 冷めさせてしまった?

 こちらから誘って、もてなすのが遊女である。それなりに経験もあって、仕事として割り切るのが務めだった。

 花魁失格だ。

 暗い気持ちが胸に広がる。こんな失敗、今までなかったのに。


「気にするな」


 それは、想像よりもずっと優しい口調だった。


「君はひとりの人間なんだから。花魁だからといって、嫌なことに慣れなくてもいい」

「嫌だなんて、とんでもありません。むしろ……」


 “期待していた”

 自分の気持ちを隠してなにも教えてくれない貴方が、初めて欲を見せて、私を女だと意識してくれるのではないかと。

 それは、遊郭という場で願うには、あまりにも純粋で異質なものだった。

 自分から触って欲しいと思うなんて、そんなの、まるで恋をしているみたい。

 客として見れなくなったら終わりなのに。どう転んでも幸せになれないとわかっているのに。


「すみません。久遠さまは、いつも私に触れようとはなさらないから、緊張してしまいました」

「ううん。謝ることはない。真っ赤になって目を閉じる君が可愛らしくて、つい笑みがこぼれてしまった」


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