涙の理由
「…………」
私は顔を少しだけ下げた。その人はニッコリ笑い
「そうですか」
と、言いどこかの部屋に入っていった。
私はまた階段へ向かう足を進めた。
「いってらっしゃいませ、柚惟様」
私はその人……彼女を見て背を向いた。
彼女の名前は………明衣という名前だった筈。私の傍にいる唯一の人。
私に家族というものはない、昔から。私が知っているのは明衣の事だけ。明衣は髪の長さは肩より少し長く、多分きっと美人というのだろう。