王女ちゃんの執事2『ひ・eye』焼きそばパン、リターンズ。
「ミスタ・アリカトウ。今日のことは、あなたの厚い友情に敬意を表して、政経の石巻先生には申し送りをしておきましょう。25分ロストした分の加算は先生が公平にしてくださるでしょう」
「うす」
 自分の寛容さに酔いしれて廊下に出て行くガイコツマンの後ろ姿を見送って。
 廊下側の列の前から2番目の席にまだ足立がいるのを確かめる。
「よう。足立、おま…」
 そこで言葉が途切れたのは、足立が露骨におれから目をそらしたからだ。
「ちょっと、加藤ぉ」
 机に肘をついてにやにや笑っているのは吾川。
 同じ事件の目撃者でも、この差はどこからくるものか。
「あのな、足立」
 おれは無視したのに、吾川がおれの袖を引いた。
「加藤。あんた、この間のボーヤと木村、二股かけてんの?」
 はぁああ?
 やばい。
 視界のすみで足立があとじさる。
 待て、足立。
「加藤がホモだったなんてねぇ」
 吾川のダメ押しで、足立、逃走。
「待て、足立。おれの話を聞けっ」
「ヒューヒュー」
 マンガのセリフのような吾川の声に精気を吸い取られつつ、廊下に飛び出した足立を追いかける。

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