王女ちゃんの執事2『ひ・eye』焼きそばパン、リターンズ。
「むかしから浩ちゃんは、お兄さんがなにもしないから家のことだってお手伝いして……。あたしは……、あたしは尊敬してた」
「…………」「…………」
 子どもに飯を食わせて住環境を整える母親の義務を、木村は《世話をしてもらっている》と思わされてきたんだろう。
 弁当を持ってこないのも、めんどうをかけるからいらないまで言っている可能性浮上。
 ばかなやつ。
「ね、加藤くん。浩ちゃん、どうしてた? 数学…受けられなくて……、どうなるんだろ。明日は、どうするんだろう」
「大丈夫。あいつ、寝不足だっただけだから。数学は米沢に監督されて医務室で受けたはずだ」
「ほんと? 浩ちゃん、数学は得意だから大丈夫だよね? 寝不足? それだけ?」
「うん。さすがに、母ちゃんに言い訳したくねぇって、落ちてたけどな」
「そうだよね。成績落ちたら、あのお母さん、なに言うかわかんないもん」
「――言わせてんだから、木村はすげーよ」
「うん! あたしだったら絶対、いいかげんにしてよって怒鳴っちゃうもん。浩ちゃんは…すごいよ」
 恋する娘はかわいいな。
 存在を消すように部屋のすみにいる町田の顔も穏やかだ。
 きっと、さぞかしきれいな色を見てるんだろう。
 …なんて。
 ちゅうちょなく思うなよ、おれ。
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