マネキン少女
助けを呼ぼうか。


でも、私が下手に動いて余計にヒロが酷い目に合わされたら。
今以上に酷い事になったら、怖い。


ヒロに何かあったらどうしよう。


結局何をする事も出来ずに、怒鳴り声が聞こえなくなるまで、立ち尽くす事しかできなかった。


怒鳴り声が聞こえなくなっても、恐怖で1歩も動けないで居ると、ドアが空く音が聞こえ、通行人のフリして様子を見に行く。


無表情で歩いているヒロの姿が見え、ホッと溜息を漏らす。


ヒロが殴られているかも知れない状況の中、何も行動を起こす事が出来なかったけど、ヒロに何かあったらと考えるだけで恐怖だった。


怖かった__


ヒロが生きている事は当たり前の事。


今の私にはそれすら奇跡で、私に全然気付いていないヒロに走り寄る。


ヒロはビックリした表情でこちらを見たが、すぐにその表情は笑顔に切り替わる。


「るるちゃん……」
「ヒロ……。殴られていない?」
「んー!るるちゃんに会えたから、大丈夫!!」


そうは言ったが、何処か疲れきった表情に見える。


そんな、ヒロを抱き締める事しか出来ない自分に腹が立つ。


「ねえ、ヒロ!」
「ん?」

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