皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「しかし――念の為、まだ城から外へは出ないようにして下さい。敷地内は広大ですし、現在の体調では、例え城の庭園内であれど歩くのは認められません」
ガクリ。私は項垂れる。
倒れてからこれまでの約3週間前。妊娠初期症状による貧血やめまいを感じることの多い私は、行動範囲を城内のみとされていた。
庭園の散歩などは御法度。花壇の花を見に行くのも「ダメ」。「城の内部を散歩するには構いません」とは言われたけれど、それはあまり気が進まず。大抵の時間は部屋の中で、花をいけたり、読書をしたり、たまに訪れる兄さんとティータイムをするなどして暇を潰していた。
部屋を出るのは毎晩の湯汲みと、2日に1度くらいの頻度でルイナードと共に食事をするときくらいだった。
もちろん、赤ちゃんのためだ。行動制限されることは仕方ない。
けれども、四六時中部屋にいるというのも、なかなか息苦しくなるものだ。
今日こそ、外出許可が出るのでは!? と期待に溢れていただけに、少しだけがっかりしてしまった。
はぁ。一週間後の診察までは、また城内での楽しみを見つけないとならないようだ。
「では、また来週に伺います。何かありましたらすぐにお呼び下さいね?」
「ありがとうございました。ハリス先生」
肩を落としながらハリス先生を見送ったあと、サリーが出窓でせかせかと手を動かしているのを確認した。
私は心を弾ませながら近づく。