皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】

寝てる⋯⋯?

そっと端正な横顔を覗き込むと、美しい瞳はまぶたの下に隠れ、翼のようなまつげが頬に影を作って揺らめいている。

ゆらりゆらりと船を漕ぐ頭。気持ちよさそうに眠っているけれども。

少し、無防備すぎやしないだろうか? 

確かめるように、自らの太腿巻き付いている短剣(ソレ)に服の上から触れる。


『俺を殺す権利を与えてやる』
『好きなときに斬りかかって構わない』


まさか、忘れているとか?


危ないからと、クロードさんから収納するホルダーを渡されたのはつい最近のことだ。

ていうか、クロードさんにしろ、ルイナードにしろ、危機感というものがまるでないような気がする。


「ん⋯⋯」

「あっ、ちょっ⋯⋯」


そのとき。不安定な動きを繰り返しているうちに、とうとう彼の手からバサリの本が落ち、ルイナードの大きな身体がゴロンとこちらに倒れ込む。

それも、事もあろうが、計算されたかのように、彼の頭がポスんと膝の上に収まってしまった。


「わっ⋯⋯」


同時にぴょこん!と跳ね上がる私の肩。

しかし、ぐっすり眠っているようで、ルイナードは何度か身じろぎを繰り返しただけで、再び膝の上で穏やかな寝息を立ててしまう。


どうしよう。


焦りを隠せず、キョロキョロと周囲を見渡す。

サリーには満面の笑みで「楽しんで」と見送られてしまい、カルム団長はここぞとばかりに「訓練するぞ!」とぴゅーんと消えていってしまった。
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