皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】

柄を握りしめてゆっくりと鞘から引き抜くと、鋭利な刀身が姿を現す。

銀色に輝く刃面はステンドグラスからの日差しにより怪しく輝き。鈍く光るそれに反射する私の顔は、少しの生気もない灰色だ。


無意識に手がカタカタと震える。唇がワナワナおののく。


こんなことをしたら、お父さまは軽蔑するだろうか?


けれども、これは私たちの取り引きだ。利害は一致している。

私は罪に問われることもなく。彼は世継ぎを得られる。

これで、十年間の苦しみから開放されて⋯⋯自由になれるんだ。


『サリーはとても愛を感じました』


――それを期待したら、負けだ。


断ち切るように、大きく両腕を振り上げた。


「――⋯っ」


そのとき。


「――遅い」


パチリと黄金の瞳が開き。

瞬時にルイナードが襲いかかってくる。

とっさに腕を振り下ろしてしまうと、空気の切り裂く音共に、短剣は床へとカランと弾き飛ばさてしまった。

早すぎて何が起きたのかわからない。

そして、瞬く間の出来事だった。


「躊躇すれば、お前がやられる」


肩を抱え込まれた瞬間。

痛みも無く、衝撃もないというのに。

ぐるりと立場は逆転し。

パチッと目を開いたころには、私の体に馬乗りになるルイナード。

大きな右手は私の喉元を捕えていた。

ひゅっと息が鳴る。
< 140 / 305 >

この作品をシェア

pagetop