皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】


「――で、犯人は捕まえたの?」


待ちきれず先を促すと、ルイナードは言いにくそうに、スッと視線を反らした。

すると、見兼ねた兄さんが代わりに口を開く。


「カルム団長の話によると⋯⋯少数による犯行だったために、逃げられたみたいだ。向こうも、威嚇のつもりで、まさか陛下に当たるとは思っても見なかったんだろうね」


その後、ルイナードの負傷もあり、応急処置を終えた一団は早急に帰還の途へついたらしい。


事態の悪化を懸念し、念の為、騎士たちの半数を現場に置いてきたようだ。騎士がいれば、多少なりとも違うはず。今後は、何事も起こらないことを祈りたい。


でも、なんだろう⋯⋯。

この気持ち。


兄さんとハリス先生が部屋を出たあとも、座り込んだまま、その場から動くことができなかった。


なんだか胸がモヤモヤする。

傷の過程がわかって、スッキリするかと思ったのに。

正反対の感情がゴワゴワとひしめいていた。

すごく、すごく、もどかしい。


ルイナードたちは、ただ、帝国のために尽くしているだけのに。

“皇帝”という立場だけで、嫌悪されて、怪我までさせられてしまうなんて⋯⋯。
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