皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「ルイナード⋯⋯?」
時計を確認すると、まだ五時。
共に眠ったはずのそこは、すでにひんやりと冷たい。
いくらネスカへ向かうとはいえ、早すぎる。
嫌な予感が走った私は、急いで落ちていたワンピースに頭を通し、クロードさんの姿を探した。
続きの扉を出たところで、「おはようございます!」と、陽気なサリーの声が聞こえたようなきがするが、気のせいかもしれない。
異様な焦燥感に駆られたまま扉を出ると、廊下の先から求めていた人影がこちらに近づいてくるのが見えた。
「アイリスさま。もうお目覚めですか」
「クロードさん!」
待ちきれずに、走り出さんばかり近づくと、彼は察したように私に言い聞かせる。
「⋯⋯陛下であれば、昨夜遅くに、ヘリオンスへ向かいましたよ」
ドクンと心臓が悲鳴をあげた。話しが違う。
「ヘリオンスって⋯⋯。工事が邪魔されているから、もう一度、現地を見にいくだけって」
「なるほど⋯⋯そう言っていきましたか」
どこか納得したように頷いたクロードさんは、ちらりと周囲に目を配る。
私室からはサリーが心配そうに顔を出し、清掃する侍女や、近侍の姿がそこらじゅうから、こちらを気にしている様子だ。
「とりあえず、移動しましょう。ゆっくり話せる場所に」
サリーへ目配せをすると、クロードさんは私を四階へと連れて行く。