皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
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長時間かけて指定された医院へ到着すると、院内にいたカルム団長と兄さんがこちらに気づいて、立ち上がる。


「アイリス! こんなところまできたのか⋯⋯。こんなことになって⋯⋯もう訳しない」

「いや、団長である俺の責任だ。当事者たちを止めることに必死で、周辺に目を配れなかった。本当に申し訳ない」


兄さんとカルム団長の悲愴な面持ちに、こっちまで不安が煽られる。

執拗に頭を下げるふたりを引き止めて、心を落ち着かせながら状況をふたりに尋ねる。


「⋯⋯ルイナードの容態は?」

「頭を強く打ったようで、意識がない。さっき城から駆けつけたハリス先生にも見てもらっているんだが⋯⋯」
「目を覚ますかは、陛下しだいだと、さっき言われたんだ」


カルム団長が言いよどみ、兄さんが力なく続けた。


途端に、目の前が真っ暗になって、ぐらりと身体が傾く。


なんですって⋯⋯


「アイリス⋯⋯!」


倒れそうになった体を、マーシーが咄嗟に受け止めてくれた。自然と、息が苦しくなる。


ルイナードが⋯⋯目を覚まさないかもしれない? 誰よりも帝国の平和を願う、心優しきルイナードが? 

だいすきな、ルイナードが⋯⋯?


背筋が震えあがる。悲鳴をあげてしまいそうだ。


そんなとき、肩を抱いていた、手にギッと力が加わりマーシーが顔が目線の位置にやってきた。

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