皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】



「ありがとうございましたーー」


ブルースターを手にしたお客さんを見送っているところ、アンナさんが現れた。


「ご苦労様。今日はレイニー君、帰り早いんだろう? 店はもう大丈夫だから上がっていいよ」


いつの間にか空はオレンジ色に変化している。一日はあっという間だ。


「いいえ、兄さんもいい大人ですから、大丈夫ですよ。トムさんが店に戻るまでは手伝わせて下さい」

「でもねぇ⋯⋯」


店の切り盛りはだいたいアンナさんがしており、夫のトムさんは出張で貴族の庭園のお手入れに行く事が多い。

そんななか私の仕事は、午前中は歩いて花売り、人足の増える午後は店の手伝いといった役割が多い。いわば、アンナさんの手の届かない部分を私が補っている――と言っても過言ではないかもしれない。

だから割と忙しい日々には慣れているのだけど――。


「店のことはいいから。それに、なんだか最近顔色も良くないんじゃないかい? 早めに帰りなさい」

「そうてすか? 気のせいだと思いますけど」

「いいから、あまり無理して身体壊したら大変だろ」


結局、その後押し問答が繰り返されて、私は帰宅する運びとなってしまった。


そんなに顔色悪いかしら……?


確かに、ここ数日は店の手伝いを終えた後、ドッと疲れが押し寄せることは多い。でも、熱も無ければ気分も悪いわけではない。ただ疲労を感じて、少し休めば翌日にはまた元気な身体に元通り。そんな状態だ。

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