皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「⋯⋯やっぱり今は身体が入らなそうね」
穴の大きさは、私の膝下くらい。試しに頭を入れてみたものの、どう考えても大人が出入りできる大きさではない。
そこで、背後からパキッと枝を踏みしめる音が響いてきた。
「――何をしている」
この声――⋯⋯。
ビクッとした拍子に、頭を思いっきりブロック塀にぶつけてしまった。
涙目で振り返えれば、腕組みしたルイナードが憮然とした表情で見下ろしていた。
つるりとした肌、細く通った鼻筋。ほんのりへの字の薄ピンク色の唇。そして襟の詰まった真紅の衣装とドレープの効いたマントは、紛れもない皇帝衣装だ。
全てが太陽に光キラキラ輝いていて⋯⋯神々しいまでの美しさに一瞬言葉を奪われてしまった。
それにしても、タイミングが悪い。
思い出に浸っていたと思われるじゃない!
「――なんでもないわよ」
「逃げようとしているのか? カルムはどこだ?」
そんな心配はいらなかったようだ。
ルイナードは周囲を見渡しながらこちらへに歩み寄ると、私を立たせてローブについた葉っぱを払う。それから当たり前のようにぶつけた箇所に触れて「あぁ傷はないようだ」と確認した。
あまりにも自然な動きに、身を任せてしまった。